単騎独考

切れるカミソリではなく、切れなくてもナタでありたい。

メディカル10( 2 )

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「あのな、見てみこの12という数字、金色や、眩しいな」

「はあ」

「最初は10の配合成分で売れまくった薬が、他社の同じ成分の目薬と価格競争を繰り広げ、値段が下がる。そしたら二つ配合成分増やして、12にして戦い始める。12の成分になってもまた他社が同じようなのを出して来る」

「はい」

「これが飽きることなく永遠に繰り返し続けられるのが資本主義の風景や」

「はい」

「そして、メディカル10は生産されなくなるんや、それは『メディカル10』の時代が終わったということや、それは俺の青春の終わりなんや」

「なるほど、ところで...」

「青春って何なんですか?立三さん」

立三はイワシ男をじっと見つめた。

「お前、ええこと聞くやないか」

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メディカル10 (1)

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立三はじっと空になった目薬を眺めていた。

目薬には「メディカル10」と書かれていた。

すぐ脇には封の切られていない「メディカル12」という目薬の箱があった。

「これで俺の青春は終わった」

立三は悲しそうにボソリと言った。

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長岡京(3)

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立三は万年筆で手紙を書いた。

たった一枚、季節の挨拶もない、簡にして要を得るとはこう言うことかとイワシ男は思った。

「経営者は忙しいやろ、季節の挨拶なんかしている暇ないんや、要件だけドンと書いたらええんや、忙しい経営者は日に三回は従業員に『結論を言え』と怒鳴っているはずや」

「なるほど」

 

イワシ男はありがちな経営者がそう怒鳴っている姿を想像すると可笑しかった。

 

「でも、何を書けばいいんですか?」

「アホ、お前、そんなんもわからんのか」

「はい」

「それが社会に必要で、その人にメリットがあるから、会って説明したい、それだけ書いたらええんや」

「それだけですか?」

「そう、それだけや」

 

イワシ男は立三がしたためた手紙を持って郵便局に向かった。

 

暑い夏の日のことだった。

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海男(3)

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「早く生まれると言うのはとくやな」

「え?」

「同じこと考えても、早く出しただけで成功できる、世の中、そんなもんや」

「あの…」

「作者、立三さんより若かったと思います」

 

それを聞いた立三はムッとした表情で黙ってしまった。

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海男(2)

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「それでな、俺は物凄い企画を思いついたんや」と立三は切り出した。

「脚本は『脚で書く本』と読むんや、つまり、『犬も歩けば棒に当たる』と言う訳や」

「なるほど」

「やっぱりな、ヒントは社会観察、マーケティングの基本は街を歩いて観察してなんぼなんや、結局、ビジネスも企画も脚本も同じなんや、わかるか?」

イワシ男はどんな企画を思いついたのか気になった。

「根本と言うのは大切、なんでも基本、それしかないんや、わかるか?人間と言うのは難しいことを言っていても、偉くなっても、オギャーと生まれてきて、最後は死ぬ」

「はい」

「それだけの話なんや、せやろ」

「はい」

一向に立三は企画の詳細を話し始める気配がない。

 

「どういう企画なんですか?」

イワシ男はたまらず尋ねた。

 

「あのな、ウ・ミ・オ・ト・コ、、、海男」

「海男ですか?」

「そうや、このポスターを街で見つけたんや、海上保安官の話や、ある青年は理由があって海上保安官になる、学校に通う、厳しい訓練を受ける、厳しい教官、仲間との友情、そして、降りかかる大事件、大事故、乗り越えながら、成長する、そんな熱き男の物語や」

「立三さん?」

「なんや?感動したか?」

「それ、漫画原作からドラマや映画になった『海猿』と一緒じゃないですか?」

「え、海猿?そんな奴あるんか?」

「あります、結構当たっていました」

「そ、そ、そうなんか...」

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海男(1)

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「おい、犬も歩けば棒に当たるって知ってるか?」立三は唐突に切り出した。

邪魔くさそうにイワシ男は振り向き「知ってますよ、いろはカルタじゃないですか?」

と答えた。

邪魔くさそうなイワシ男を見て、立三はムッとして「一寸先は闇はいろはカルタちゃんうか?」とイワシ男に詰め寄り「一を聞いて十を知る、もやろ」とさらに踏み込んだ。

立三は得意そうだった。

「あのな、いろはカルタには江戸、京都、大阪と三種類あるんや」

「へー」

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QBハウス価格を改善する

QBハウスが価格を改善したらしいですね」とイワシ男は立三に話を振った。

「昔、世界的に有名で高額なフィーを取ることで知られる経営戦略コンサルタントが『日本の理容は総合調髪業や、ヒゲは家で洗髪も家でやったらええやないか』と本で書いて、そういう安い『髪切る』だけの理容室を提案したら、読んだ人が10分、髪切るだけで1000円の床屋を始め、成功した。そして、床屋は価格競争に飲み込まれ極限まで価格を下げることになったんや」

「合理的だと思うんですが」

「一見するとな」

「一見ですか?」

「そうや、『ヒゲや洗髪は家でやったらええやないか』て言うけどな、理容室でヒゲを剃ると家ではそれないぐらい深く剃ってくれるし、家で自分で洗髪しても理容室と違ってそこまで気持ちよくないんや」

「それはそうですね」

「それに、理容というのは大資本でやるようなビジネスではないんや、大資本が要るわけでもない、そこに機能上の分解を持ち込んでシステムでなんとかしようという資本の論理での経営を持ち込んで来てもなかなか難しいということや」 

「じゃ、その有名なコンサルタントは実はイマイチなんですか?」

「そこまで言うたら可哀想や。多分、理容室をクライアントにしては言っていない、わかりやすい例を探したら思いついただけや。」

「どうして価格をあげたんですか?」

「多分、人材難で人件費が上がったんとちゃうか?」

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