単騎独考

切れるカミソリではなく、切れなくてもナタでありたい。

アメリカンフットボール選手の敗者復活戦(1)

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ある日、突然、イワシ男は「ちょっと来い」と立三に大阪梅田に連れて行かれた。

阪急電車を降り、紀伊国屋書店を越して、少し歩いたあたりにある喫茶店での打ち合わせだった。

そこにいたのは、元スポーツマンらしく刈り上げた爽やかな笑顔の中年男性だった。

「浦崎です」とその男は挨拶した。

少し緊張しているようにイワシ男には見えた。

「君は日本一になったことないんちゃうか?』と立三は担当直入に切り出した。

「日本一」浦崎はそう呟いたあと、一瞬考え、「は、はい」と答えた。

「あのな、あの大学、勉強は良くできる、それでフットボールやったら就職最強、引く手数多なんや、何しろかつては日本一位になった文武両道のフットボール部やからな」

「はい」

「でもな、あそこのフットボール部出て、社会で大きな仕事したことある奴見たことないんや」と立三は言い放った。

大学の後輩ということで身内意識があったから歯に衣着せぬ言い方をしたのか、親身になっているからこそなのか、立三は珍しく今日は少し厳しい気がした。

その物言いにムッとすることもなく浦崎は「どうしてでしょうか?」と尋ねた。

「みんな大学でフットボールを真面目にやるのはええけど、人生で何をやりたいのか、やるべきなのかをじっくりと考えるチャンスを全部フットボールに持って行かれてしまってるんやないかと思う、せやからフットボールが終わったあと人生をどう生きたらいいのか、わからん奴ばっかりなんやないかなと思う、なんぼ逸材でも志がなければどしようもないということや」

「はい」

 

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*役仁立三シリーズは事実に基づくフィクションです。時々、完全にフィクションです。 

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さかはらあつし