単騎独考

切れるカミソリではなく、切れなくてもナタでありたい。

祇園の月(2)

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立三は京都の祇園を歩いていて見かけた福栄堂の「祇園の月」を見て、これは素晴らしいお菓子に違いないと考えを巡らせた。

 

「月こそ日本の庭園の本質である。全ての庭園は月を愛でるためにある」と華道遠州流宗家に桂離宮を案内してもらった時に教えてもらったことを覚えていたから心に響いたのかもしれない。

 

銀閣寺に白い築山がある。あの山は月を愛でるためのもの。

 

金閣寺には池がある、桂離宮にも池がある、それらもやはり月を愛でるもの。

 

祇園の月」を見ると、「闇夜の月」ということなのだろうか、黒いなかに一筋明るい月色の団子が並んでいる。

 

しかし、その並び方、佇まいはそれを説明しない、龍安寺の石庭のように突き放している。

 

月はどこにでもある普遍的な存在である。祇園は固有だ。

 

その二つを掛け合わせ、祇園の空気、京都の東山にのぼる月を想起させてくれる。

 

お土産に使ってもらえる、風情豊かな名前だ。 

 

しかし、立三はまだ「祇園の月」を食べたことがない。

 

その時に買うのをためらったからだ。

 

「しまった」と気づく。

 

「チャンスに後ろ髪はない」は本当である。

 

「それがわかったので良かったではないか」と思う。

 

そう言い聞かせて、立三は昼寝を決め込む。

 

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*役仁立三シリーズは事実に基づくフィクションです。

 

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さかはらあつし