単騎独考

切れるカミソリではなく、切れなくてもナタでありたい。

日本から高等教育機関イノベーションを

 

日本の高等教育問題、奨学金問題というのは長く議論されています。高等教育に限ったことではないのだとは思いますが、そのために消費税アップということを聞くと、そんなことをする前に日本は出来ることがもっとあるだろう、そして、それが出来たならば、世界で高等教育イノベーションの国として尊敬される国になれるだろうと思い、私のアイデアについて記すことにしました。

 

私は現在、作家、映画監督、経営コンサルタントをしておりますが、高等教育というものを私なりに永らく考えて来ました。

 

アメリカの経営管理大学院(MBA)で学んだ後、シリコンバレーの教育関係のベンチャー企業に参加していました。一つは今でいうオンライン英会話の先駆け的な会社に参加し、もう一つはその投資家がCEOを務める音声認識を活用した言語能力試験のベンチャー企業でした。前者は上手くいかず、後者は世界的な情報会社に買収されました。

 

その仕事の縁から、大学の特別研究所員や客員研究員として、主に情報と教育、そして、サービスイノベーションに関して、私なりに研究と考察をして来ました。私のアメリカの経営管理大学院の一年先輩にパトリック・アウアというガーナ人の先輩がいました。大学入学直後に私は大学院の教授からパトリックを紹介されました。

 

パトリックはガーナではミドルクラスの家庭の息子ですが、国情から決して留学させてもらえるほど裕福ではありませんでした。しかし、彼は全額給付の奨学金をもらって、アメリカ、ペンシルバニア州の名門リベラルアーツカレッジで学んだ後、成長著しいマイクロソフトに入社、一財産をストックオプションで成し、これからの人生をどう生きるべきか考えたのです。

 

そして、自らの祖国にコンピューターと経営学を教える大学を作り、アフリカにルネッサンスをという夢を抱き、資金を集め、アシェシという大学を作りました。TEDでも講演しています。

 

私は誘ってもらい、キャンパスのオープンの式典にも参加しました。

 

アシェシ大学は全寮制の大学ですが、学校の様子を見て、学ぶものが時間と場所を共有する「場」というのは非常に大切なものであるなと強く感じました。

 

私は試験ビジネスに携わっていましたから、教育には能力を明示する機能があるなとは思っていました。「あの大学出身だからこのぐらいの能力はあるだろう」という具合です。しかし、それは試験によってかなりの部分が代替できるとも知っていました。

 

また、学校という教育の重大な役割「知識の移転」はほぼ全てがオンラインのビデオチュートリアルによって代替されることも知っていました。実際、カーンアカデミーというNPOによる無償初等、中等教育のビデオチュートリアル教育コンテンツは少なくともアメリカでは広く使われ、学校における指導法そのものが大きく変わりつつあります。これも日本に進出しています。

 

映像制作の世界でもリンダ・コムというサイトがクリエイティブ関連のソフトウエアなどのビデオチュートリアルとして知られ、安い月額料で全ての講座が見放題なので、英語圏では実質的に標準となっています。また、最近は日本にも進出しています。また、世界の大学はオープンコースウエア(OCW)と言って、正規の授業をどんどんインターネットで無料公開するようになっています。

 

日本には放送大学というテレビ、ラジオ、インターネットを通じて学べる素晴らしい大学があります。大学研究者の間では有名な事実ですが、放送大学の教授陣は日本でもトップクラスで、授業料が四年間で70万円ちょっとと信じられないぐらい安いんです。世界のオンライン大学の授業料と比べても圧倒的に安い。大学院は学部時代の大学の偏差値とか知名度よりも優れた研究者の推薦状がものをいう世界だから、その推薦状でアメリカの大学院に留学して来た人や日本の有名大学の大学院に進学し博士号を取得した人に何人も出会いました。その人たちは一般の大学に進む資金的余裕がなかったのかもしれませんが、「この手があったのか」と唸りたくなるほど抜け目がないというか、なんというか、経済的な学び方ですね。

 

そういう大学での勉強の仕方をするには相当な意志力が必要で、放送大学にも学生同士の交流の「場」は設けられていても、高校を出たばかりの若者にはなかなか続かないところがあるのではないかと思います。

 

それだったら、放送大学で学ぶ若者が暮らすシェアハウスを作り、そこでアルバイトなどをしながら5、6年かけて卒業してもらうようなことをすればいいのではないかと思います。そこにはメンターがいて応援する、そういう「場」を提供する社会事業です。

 

このやり方には東大には真似の出来ないことができます。もし、複数のシェアハウスを異なる地域で運営できたら卒業までに一度、移動することを認めるような制度にします。すると在学中の半分は沖縄で過ごしたり、半分は北海道で過ごしたりするようなこともできます。

 

また、若者の労働力不足の地域では、仕事を用意する、放送大学の授業料に対して補助を出すなどのインセンティブを地元のコミュニティがするのです。だからと言って、コミュニティにずっと住まないとけないような紐は絶対につけないようにします。そうすると次の若者が来なくなるので逆効果です。

 

私は先ごろ、「小さくても勝てます」ダイヤモンド社 税別1500円)という本を上梓しました。元経営コンサルタントの私の分身のキャラクターが実在の理容室を応援し経営理論は駆使し成功させていく物語で、楽しみながら経営理論を学んでいただける本で、事実に基づくストーリーであること、実際に使える発想法にまで踏み込んでいる本です。

 

f:id:atsushisakahara:20171115183227j:plain

実はその実在の主人公も私に勧められて放送大学を卒業し、また、彼に英語を教える青年も同じように放送大学で学ぶ青年です。教えている青年は私が専門学校で教えていた時に学資が続かず、断念した教え子です。

 

このシステムは世界に展開することができます。日本人だけでなく、海外の学生用に海外のオンライン大学と提携することもできます。

 

私は作家、映画監督、経営コンサルタントをしていますが、この社会事業を少しずつ何とか実現したいと考えています。

 

どうして、このようなことを私は書くのかと言えば、それは、応援しようという人が出てくればいいなという思い、一緒にやろうという人に出会えればいいなという思い、やりましょうという自治体が現れればいいなという思いからです。

 

決して儲かる事業ではありませんが、日本の根本を作る社会事業だと思います。

そして、世界では未だ行われていない高等教育事業モデルです。

  

さかはらあつし 1966年生まれ、京都大学経済学部卒、電通を経て、カリフォルニア大バークレー校にてMBA取得後、シリコンバレーベンチャー企業に。その時、MBA時代に参加した映画がカンヌ映画祭短編部門でパルムドール賞受賞、帰国。経営コンサルタント、作家、映画監督、「小さくても勝てます」ダイヤモンド社)を2017年12月7日に出版した。