単騎独考

切れるカミソリではなく、切れなくてもナタでありたい。

海男(3)

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「早く生まれると言うのはとくやな」

「え?」

「同じこと考えても、早く出しただけで成功できる、世の中、そんなもんや」

「あの…」

「作者、立三さんより若かったと思います」

 

それを聞いた立三はムッとした表情で黙ってしまった。

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さかはらあつし 

海男(2)

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「それでな、俺は物凄い企画を思いついたんや」と立三は切り出した。

「脚本は『脚で書く本』と読むんや、つまり、『犬も歩けば棒に当たる』と言う訳や」

「なるほど」

「やっぱりな、ヒントは社会観察、マーケティングの基本は街を歩いて観察してなんぼなんや、結局、ビジネスも企画も脚本も同じなんや、わかるか?」

イワシ男はどんな企画を思いついたのか気になった。

「根本と言うのは大切、なんでも基本、それしかないんや、わかるか?人間と言うのは難しいことを言っていても、偉くなっても、オギャーと生まれてきて、最後は死ぬ」

「はい」

「それだけの話なんや、せやろ」

「はい」

一向に立三は企画の詳細を話し始める気配がない。

 

「どういう企画なんですか?」

イワシ男はたまらず尋ねた。

 

「あのな、ウ・ミ・オ・ト・コ、、、海男」

「海男ですか?」

「そうや、このポスターを街で見つけたんや、海上保安官の話や、ある青年は理由があって海上保安官になる、学校に通う、厳しい訓練を受ける、厳しい教官、仲間との友情、そして、降りかかる大事件、大事故、乗り越えながら、成長する、そんな熱き男の物語や」

「立三さん?」

「なんや?感動したか?」

「それ、漫画原作からドラマや映画になった『海猿』と一緒じゃないですか?」

「え、海猿?そんな奴あるんか?」

「あります、結構当たっていました」

「そ、そ、そうなんか...」

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さかはらあつし 

海男(1)

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「おい、犬も歩けば棒に当たるって知ってるか?」立三は唐突に切り出した。

邪魔くさそうにイワシ男は振り向き「知ってますよ、いろはカルタじゃないですか?」

と答えた。

邪魔くさそうなイワシ男を見て、立三はムッとして「一寸先は闇はいろはカルタちゃんうか?」とイワシ男に詰め寄り「一を聞いて十を知る、もやろ」とさらに踏み込んだ。

立三は得意そうだった。

「あのな、いろはカルタには江戸、京都、大阪と三種類あるんや」

「へー」

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QBハウス価格を改善する

QBハウスが価格を改善したらしいですね」とイワシ男は立三に話を振った。

「昔、世界的に有名で高額なフィーを取ることで知られる経営戦略コンサルタントが『日本の理容は総合調髪業や、ヒゲは家で洗髪も家でやったらええやないか』と本で書いて、そういう安い『髪切る』だけの理容室を提案したら、読んだ人が10分、髪切るだけで1000円の床屋を始め、成功した。そして、床屋は価格競争に飲み込まれ極限まで価格を下げることになったんや」

「合理的だと思うんですが」

「一見するとな」

「一見ですか?」

「そうや、『ヒゲや洗髪は家でやったらええやないか』て言うけどな、理容室でヒゲを剃ると家ではそれないぐらい深く剃ってくれるし、家で自分で洗髪しても理容室と違ってそこまで気持ちよくないんや」

「それはそうですね」

「それに、理容というのは大資本でやるようなビジネスではないんや、大資本が要るわけでもない、そこに機能上の分解を持ち込んでシステムでなんとかしようという資本の論理での経営を持ち込んで来てもなかなか難しいということや」 

「じゃ、その有名なコンサルタントは実はイマイチなんですか?」

「そこまで言うたら可哀想や。多分、理容室をクライアントにしては言っていない、わかりやすい例を探したら思いついただけや。」

「どうして価格をあげたんですか?」

「多分、人材難で人件費が上がったんとちゃうか?」

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さかはらあつし 

ヒーローはネパール人(1)

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丹波の夏の雲

その日、立三はいつになくサングラスをかけていた。

「ええやろ」

「はい」

こういう時、そう答えなければ立三は必ず不機嫌になるので、イワシ男はそう答えた。

「今日な、帰りに9号線沿、亀岡あたりでインドカレー屋に寄ったんや」

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「あ、前にも立ち寄った言ってましたね」

「そうそう、その店に行って、インド料理屋の秘密を教えてもらったんや」

 

関西のインド料理屋さんのほとんどは今はネパール人の経営らしい。競争がなく単価が高かった頃はインド人がやっていたが、価格競争が始まると日本を脱出を始めたらしい。価格競争を仕掛けたのか、低価格でも頑張ったからかはわからないが、今、関西、大阪、京都、滋賀のインド料理屋はネパール人の独占で総計80店はあるのである。この80店舗はファミリーの独占で、その店の見分け方は「タージマハールなんちゃら」「何ちゃらタージマハール」というのはみんなファミリーなのだそうだ。

 

ネパール人はファミリーで助け合って店を拡大している。おじさんが日本に来て店を開き繁盛させると、親戚の若者を呼び寄せ、キッチンで働せ、日本語を教え込む。5年ぐらいすると店を任せ、希望すれば店を購入してオーナーになることもできる。

 

店舗数が増えると材料の卸売も始める。

 

「昔ながらの暖簾分けやな」と立三は呟いた。

 

「それでな、そこまで話聞いてたら、ネパール人のオーナーが『あっ』て叫びよるんや」

 

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「80歳ぐらいの爺さんがフラフラと倒れて顔面を地面にぶつけて血まみれになったんや」

 

「『それで俺はネパール人に119 で救急車!』と叫んで助けに向かったんや」

 

「介抱してたら、どうなったと思う?」

 

「いえ、わかりません」 

 

こういう時は何も言わないのが一番とイワシ男は心得ていた。

 

「通りすがりの人は、『大丈夫ですか?』と声をかけてくれるんやけどな、どうも俺がぶん殴ったとでも思ってるような目つきなんや」

 

イワシ男は思わず、笑いが込み上げ、それを懸命に堪えたつもりだったが、遅かった。

 

「お前、何が面白いんや、こっちは命を大真面目に助けてるんやぞ」

 

しかし、老人は倒れ、顔面を痛打し、出血しているが、交通事故らしい痕跡はどこにもない、サングラスをかけた体格の良い、言ってしまえば怪しい風体の立三がそばにいるのだから、立三がぶん殴ったと理解する人がいても責められない。

 

「その視線に耐えていたら、救急車が来た、それで一件落着や」

「こんな暑い最中に人助けして悪く思われる、最悪の日や」

「本当ですね」

イワシ男は同情した。

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「でもな、店を出る時、日本語のできるネパール人に『救急車呼ぶのはじめてやろ?』て言うたら頷きよった。救急車、呼ぶ時、一瞬、躊躇しよっったんや、俺は気づいていた」

 

「日本語で説明できる自信がなかったんとちゃうぞ、異邦人がよその国で警察や救急車呼んで、間違ってなんかあったら、酷い目にあうこともある、あの爺さんをぶん殴ったんがそのネパール人やという話がどうねつ造されるかもしれんやろ、外国で生きるとはそういうことなんや」

 

なるほど、そんなものかとイワシ男は思った。

 

「で、こんな時、どうせなあかんかわかるか?、連絡先を渡し、『何か問題があれば連絡をください』と言うんやで、わかるか?」

 

イワシ男は返事をせずに立三が名刺を渡したのか尋ねようとしたら、立三は続けた。

 

「あのネパール人、学校に行かんと独学で日本語勉強したと言うてた、入り口に日本語の辞書があった、偉いな、今日のヒーローはあのネパール人や」

 

 

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長岡京プロジェクト(2)

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立三がビールを飲んでいるとイワシ男がやって来た。

「この間の長岡京の理容室の件、どうするんですか?」

「あのな、人にものを尋ねる前に己の頭で考えるんや」

「はい」

「はい、やない、お前はどう思うんや?」

「わかりません」

立三はイワシ男を悲しそうな眼差ししばらく見つめた。

見つめられたイワシ男は申し訳ないというか、自分が悲しいというか、なんとも妙な気持ちになった。

「そうか、わからんか... 理容室のメディア化や」

「メディア化ですか?」

「そうや、メディア化や」

media(メディア)はmediumメディウム)の複数形。medium は、中間にあるもの、間に取り入って媒介するもの、とウイキペディアに書かれている。

*)詳細は「小さくても勝てます」参照。

「今な、小売のビジネスは全部アマゾンに持っていかれつつあるやろ」

「はい」

「やられっぱなしでいいわけない、アイデアはある、地域経済活性化、地方のブランド発信、情報発信とやることは沢山あるんや」

「でも、理容室たった二軒でですか?」

立三は少しムッとした。

「あのな、ポックやポック、POCわかるか?」

「なんなんですか?ポックて?」

「POCや、Proof of Concept、概念実証という意味や」

立三によると最初は理容室二軒でも小さくやって成功する構造を作り出せば、あとは右へならへでどんどんみんあん参加してくる、そして、大きな動きになるということだった。

そこまで話すと立三はビールを飲み干したかと思うとすぐ横になりいびきをかいて眠ってしまった。

 

イワシ男は自宅のある大阪に向かった。

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「日本を出ろ」

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立三は弟子のイワシ男に向かって「日本って最低の国やな」とコーラプラスを飲みながら呟いた。

 

イワシ男は「突然、どうしてですか?」と怪訝そうに尋ねた。

 

「日本は結局、宮仕のムラ社会、メンバーシップ社会とか言うてるけど、そういうことやろ、個人で頑張ってもみんなで寄ってたかって潰す、そして、個人で頑張って成功しても、平気な顔して、組織は個人を収奪する、阿保らしいてやってられんやろ」

 

イワシ男は「どうしたらいいんですか?」と再び尋ねた。

 

「残念やけど、日本を出ろ、日本に未来はない、所詮、日本は島国や、アメリカでも中国でも行ったらええんや」

 

「どうやって出るんですか?」

 

「そんなんもわからんのか?」

 

「はい」

 

「今、日本は島国やて言うたやろ」

 

「はい」

 

「泳ぐか、船か、飛行機しかない、歩いては難しいやろ」

 

「あ、独立排他で網羅的、もれなくダブりなく、MECEですね?」

 

「そうや、お前も知恵がついてきたやないか」

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